国際連合危険物輸送勧告関連試験(国連勧告試験)

国際連合危険物輸送勧告関連試験(国連勧告試験)について

日本国内では危険物は消防によって第1類から第6類まで分類されていますが、危険物を海上輸送または航空輸送する場合は国連勧告による試験を行って物品のクラス分けを行い、UN No.を決める必要があります。物質・物品がオレンジブックに記載されている場合はそのUN No.が適用されますが、記載されていない場合は荷主(運送依頼者)がUN No.を決めなくてはなりません。誤った情報により運送中に事故・災害が発生した場合、多大な損害賠償を請求されることがあります。消防と違って各クラスで固有の物質等が指定がなく、可能性のある全ての試験を行う必要があるので注意が必要です。

また、GHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム:通称パープルブック)によるカテゴリーでも国連勧告の試験による分類がされているので、ラベル作成には国連勧告試験の評価が必要となります。

以下に試験所で実施可能な試験項目を各クラス別に記載します。

クラス 区分 試験項目
1(火薬類)   UN Gap試験
時間/圧力試験
Koenen試験
BAM落つい感度試験
BAM摩擦感度試験
3(引火性液体)   引火点試験(タグ密閉式及びセタ密閉式)
燃焼継続性試験
4(可燃性物質)
4.1(可燃性物質)
(自己反応性物質)
燃焼速度試験
※自己反応性物質は5.2と同様
4.2(自然発火性物質)
(自己発熱性物質)
自然発火性試験及び自己発熱性試験
4.3(水反応可燃性物質)
水との反応性試験
5(酸化性物質)
5.1(酸化性固体)
(酸化性液体)
酸化性固体試験
酸化性液体試験
5.2(有機過酸化物)
BAM50/60鋼管試験
時間/圧力試験
爆燃試験
Koenen試験
オランダ式圧力容器試験
Mk Ⅲ d弾動臼砲試験
蓄熱貯蔵試験
輸送物形態における熱爆発試験
輸送物形態における爆燃試験
8(腐食性物質)
  金属腐食性試験
9(有害性物質)
  トラフ試験
9(エアバッグインフレーター及びシートベルトプリテンショナー類)   外部火災試験

クラス1(爆発性物質)

UN Gap試験(試験シリーズ1及び2)(400ml)

物質を鋼管に充填して高性能爆薬で起爆します。

評価
(試験シリーズ1及び2)
【爆発性有(+)】
鋼管が完全に裂けるまたは証拠板に穴が空く
【爆発性無(-)】
鋼管が裂けずに残り証拠板に穴が空かない

Koenen試験(試験シリーズ1及び2)(400g)

物質を強制的に加熱して分解の激しさを評価します。

評価
(試験シリーズ1)
【激しい分解の可能性有(+)】
限界オリフィス径が1.0mm以上
【激しい分解の可能性無(-)】
限界オリフィス径が1.0mm未満
評価
(試験シリーズ2)
【激しい分解(+)】
限界オリフィス径が2.0mm以上
【激しい分解せず(-)】
限界オリフィス径が2.0mm未満

時間/圧力試験(試験シリーズ1及び2)(50g)

物質が着火した際の激しさを評価します。

評価
(試験シリーズ1)
【爆燃の可能性有(+)】
最大圧力が2,070kPa以上
【爆燃の可能性無(-)】
最大圧力が2,070kPa未満
評価
(試験シリーズ2)
【爆燃の可能性有(+)】
690kPaから2,070kPaの圧力上昇時間が30ms未満
【爆燃の可能性無(-)】
690kPaから2,070kPaの圧力上昇時間が30ms以上

BAM落つい感度試験(試験シリーズ3)(10g)

物質に物理的な衝撃を与え、爆発するか否かを調べます。

評価 【衝撃に対して鋭敏すぎる(+)】
6分の1爆点が2J以下
【衝撃に対して鋭敏すぎない(-)】
6分の1爆点が2Jを超える

BAM摩擦感度試験(試験シリーズ3)(2g)

物質に物理的な摩擦を与え、爆発するか否かを調べます。

評価 【輸送するには危険すぎる(+)】
6分の1爆点が80N未満
【輸送するには危険すぎない(-)】
6分の1爆点が80N以上

クラス1の試験は以下のフローに従って各種試験が行われますが、試験シリーズ3以降は火薬類としての試験になりますので、詳細については別途ご相談をさせていただきたくお願いいたします。また、対象となるのは以下のような物質ですが、SC-DSC等を用いて測定した発熱分解エネルギーが500J/g未満で、かつ分解開始温度が500℃より低い場合はクラス1の区分外になります。また、酸素収支の計算値が200未満の場合も同様です。

  • C-C不飽和結合:アセチレン類、アセチリド類、1.2-ジエン類
  • C-金属、N-金属:グリニヤル試薬、有機リチウム化合物
  • 隣接した窒素原子:アジド類、脂肪族アゾ化合物、ジアゾニウム塩類、ヒドラジン類、スルホニルヒドラジド類
  • 隣接した酸素原子:過酸化物、オゾニド類
  • N-O:ヒドロキシルアミン類、硝酸塩類、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、N-オキシド類、1-2-オキサゾール類
  • N-ハロゲン:クロロアミン類、フルオロアミン類
  • O-ハロゲン:塩素酸塩類、過塩素酸塩類、ヨードシル化合物

クラス3(引火性液体)

引火の危険性を評価します。

タグ密閉式引火点試験(300ml)、セタ密閉式引火点試験(100ml)

評価 【容器等級Ⅰ(GHSカテゴリー1)】
初留点が35℃以下
【容器等級Ⅱ(GHSカテゴリー2)】
引火点が23℃未満で初留点が35℃を超える
【容器等級Ⅲ(GHSカテゴリー3)】
引火点が23℃以上60℃以下で初留点が35℃を超える
【GHSカテゴリー4】
引火点が60℃を超え93℃以下
【クラス3には該当せず】
引火点が60℃を超える
【GHSの引火性液体には該当せず】
引火点が93℃を超える

燃焼継続性試験(50ml)

引火点が35℃を超えていて燃焼を継続しない液体は、以下のいずれかである場合はクラス3の適用除外となります。

1:燃焼継続性試験において燃焼を継続しない
2:クリーブランド開放式引火点試験にて燃焼点が100℃を超える
3:水溶液で水の含有率が90%を超える

燃焼継続性試験は、セタ開放式引火点試験機を用いて燃焼を継続するか否かを評価します。

評価 【適用除外とはならない】着火して15秒以上燃焼が継続
【適用除外とされる】燃焼を継続しない

クラス4 区分4.1(可燃性物質)

着火した時の燃焼時間で危険性を評価します。

燃焼速度試験(450ml)

物質をプリズム状に成形して着火し、燃焼速度を測定します。

評価 【容器等級Ⅱ(GHSカテゴリー1)】
(金属粉以外)燃焼時間が45秒未満で燃焼が湿性部を超える
(金属粉)燃焼時間が5分以下
【容器等級Ⅲ(GHSカテゴリー2)】
(金属粉以外)燃焼時間が45秒未満で燃焼が湿性部を超えない
(金属粉)燃焼時間が5分を超え10分以下
【区分4.1には該当せず】
(金属粉以外)燃焼時間が45秒以上
(金属粉)燃焼時間が10分を超える
予備試験にて(金属粉以外)燃焼時間が2分を超える
予備試験にて(金属粉)燃焼時間が20分を超える

※自己反応性物質の場合はクラス5 区分5.2と同様

クラス4 区分4.2(自然発火性物質)

自然発火性試験(100ml)

空気中での自然発火の危険性を評価します。

固体 試験方法 1.落下法
評価 【容器等級Ⅰ(GHSカテゴリー1)】自然発火する
【自己発熱性試験を実施】自然発火せず
液体 試験方法 1.磁製カップ法
2.濾紙法
評価 【容器等級Ⅰ(GHSカテゴリー1)】
「1.磁製カップ法」「2.濾紙法」で自然発火
【容器等級Ⅱ(GHSカテゴリー1)】
「2.濾紙法」で濾紙を焦がす
【区分4.2には該当せず】
「1.磁製カップ法」「2.濾紙法」で自然発火せず、「2.濾紙法」で濾紙を焦がさない

クラス4 区分4.2(自己発熱性物質)

空気中の酸素による酸化発熱の危険性を評価します。

自己発熱性試験(2,500ml)

物質を金網に入れて一定温度に保ち、発熱の有無を評価します。

評価 【容器等級Ⅱ(GHSカテゴリー1)】
140℃2.5cm容器で発熱する
【容器等級Ⅲ(GHSカテゴリー2)】
140℃10cm容器で発熱する
【区分4.2には該当せず】
140℃10cm容器で発熱しない
【容量3m3梱包では区分4.2の適用除外(GHSカテゴリー2)】
120℃10cm容器で発熱しない
【容量0.45m3梱包では区分4.2の適用除外(GHSカテゴリー2)】
100℃10cm容器で発熱しない

クラス4 区分4.3(水反応可燃性物質)

水と接触した時に発火するかまたは可燃性ガスを発生するか否かを評価します。

水との反応性試験(30g)

試験方法 1.少量ビーカー法
2.固体の場合は堆積法
3.発生ガス量測定
評価 【容器等級Ⅰ(GHSカテゴリー1)】
「1」「2」で自然発火
【容器等級Ⅰ(GHSカテゴリー1)】
「3」で可燃性ガスの発生量が10L/kg/min以上
【容器等級Ⅱ(GHSカテゴリー2)】
「3」で可燃性ガスの発生量が20L/kg/hr以上
【容器等級Ⅲ(GHSカテゴリー3)】
「3」で可燃性ガスの発生量が1L/kg/hrを超える
【区分4.3には該当せず】
「3」で可燃性ガスの発生量が1L/kg/hr以下

クラス5 区分5.1(酸化性物質)

物質が酸化性物質であるか否かを評価します。

酸化性固体試験(400g)

標準物質 臭素酸カリウム
還元剤 セルロース粉末
評価 【容器等級Ⅰ(GHSカテゴリー1)】
燃焼時間が混合比3:2の燃焼時間未満
【容器等級Ⅱ(GHSカテゴリー2)】
燃焼時間が混合比2:3の燃焼時間以下
【容器等級Ⅲ(GHSカテゴリー3)】
燃焼時間が混合比3:7の燃焼時間以下
【区分5.1には該当せず】
燃焼時間が混合比3:7の燃焼時間を超える

酸化性液体試験(50g)

標準物質 50%過塩素酸、40%塩素酸ナトリウム水溶液、65%硝酸
還元剤 セルロース粉末
評価 【容器等級Ⅰ(GHSカテゴリー1)】
混合物が自然発火
【容器等級Ⅰ(GHSカテゴリー1)】
圧力上昇時間が50%過塩素酸未満
【容器等級Ⅱ(GHSカテゴリー2)】
圧力上昇時間が40%塩素酸ナトリウム水溶液以下
【容器等級Ⅲ(GHSカテゴリー3)】
圧力上昇時間が65%硝酸水溶液以下
【区分5.1には該当せず】
圧力上昇時間が65%硝酸水溶液を超える

クラス5 区分5.2(有機過酸化物)・クラス4 区分4.1(自己反応性物質)

自己反応性物質及び有機過酸化物の試験は下記のフローに従って各種試験が行われます。
自己反応性物質の対象となる物質は以下のような原子団を持つ(クラス1に関する原子団も含む)物質です。

  • 相互に反応するグループ
    アミノニトリル類、ハロアニリン類、酸化性の酸と有機物との塩
  • S=O
    ハロゲン化スルホニル類、シアン化スルホニル類、スルホニルヒドラジド類
  • P-O
    亜リン酸塩類
  • 歪みのある環
    エポキシド類、アジリジン類
  • 不飽和結合
    オレフィン類、シアン酸塩

但し、以下の条件に合致するものは自己反応性物質からは除外されます。

  1. 火薬類の判定基準により火薬類(クラス1)になるもの
  2. 酸化性物質(クラス5 区分5.1)になるもの
  3. 有機過酸化物(クラス5 区分5.2)になるもの
  4. SC-DSC等を用いて測定した発熱分解エネルギーが300J/g未満のもの
  5. 50kgの輸送物におけるSADTが75℃を超えるもの(蓄熱貯蔵試験による結果)

自己反応性物質判定フローチャート

テストシリーズ

テストシリーズA【 BOX1 】

爆轟を伝播するか:物質を鋼管に充填して高性能爆薬にて起爆

BAM50/60鋼管試験(3,600ml)

評価 【Yes】
鋼管が完全に裂ける
【Partial】
鋼管の破裂長さが不活性物質の1.5倍を超える
【No】
鋼管の破裂長さが不活性物質の1.5倍以下

テストシリーズC【 BOX3、4、5 】

爆燃を伝播するか:着火した際の激しさを評価

時間/圧力試験(50g)

評価 【Yes, rapidly】
690kPaから2,070kPaの圧力上昇時間が30ms未満
【Yes, slowly】
690kPaから2,070kPaの圧力上昇時間が30ms以上
【No】
最大圧力が2,070kPaに達しない

爆燃試験(1,500ml)

評価 【Yes, rapidly】伝播速度が5.0mm/sを超える
【Yes, slowly】伝播速度が5.0mm/s以下0.35mm/s以上
【No】伝播速度が0.35mm/s未満

テストシリーズE【 BOX7、8、9、13 】

密閉加熱の影響はどうか:物質を強制的に加熱して分解の激しさを評価

Koenen試験(400g)

評価 【Violent】
限界オリフィス径が2.0mm以上
【Medium】
限界オリフィス径が1.5mm以上
【Low】
限界オリフィス径が1.0mm以下で破壊のタイプO以外
【No】
限界オリフィス径が1.0mm以下で破壊のタイプO

オランダ式圧力容器試験(300g)

評価 【Violent】
試料量10gで限界オリフィス径が9.0mm以上
【Medium】
試料量10gでオリフィス径が3.5mmまたは6.0mmで破裂するが9.0mmでは破裂しない
【Low】
試料量10gでオリフィス径が1.0mmまたは2.0mmで破裂するが3.5mmでは破裂しない、または試料量50gでオリフィス径1.0mmで破裂する
【No】
試料量50gでオリフィス径が1.0mmでも破裂しない

テストシリーズF【 BOX12 】

爆発威力はどうか:物質を強制的に爆発分解させて爆発威力を評価

Mk Ⅲ d弾動臼砲試験(300g)

評価 【Not Low】
爆発威力がピクリン酸の7%を超える
【Low】
爆発威力がピクリン酸の1%を超えて7%以下
【No】
爆発威力がピクリン酸の1%未満

テストシリーズD【 BOX6 】

輸送物の状態で急速に爆燃するか:包装形態の中心を火薬にて着火させ、燃焼状況を評価

輸送物形態の爆燃試験

評価 【Yes】
包装容器が3つ以上に破裂する
【No】
包装容器が破裂しない、または破裂しても3つ以下

本試験は屋外試験場を使用した試験になるので、実施については別途ご相談ください。

テストシリーズG【 BOX10 】

輸送物の状態で爆発するか:包装形態のまま周囲から加熱し、分解状況を評価

輸送物形態の熱爆発試験

評価 【Yes】
包装容器が3つ以上に破裂する
【No】
包装容器が破裂しない、または破裂しても3つ以下

本試験は屋外試験場を使用した試験になるので、実施については別途ご相談ください。

テストシリーズH

物質を一定温度に保ち、分解状況を評価

蓄熱貯蔵試験(2,000ml)

評価 【自己反応性物質に該当しない】
SADTが75℃を超える
【自己反応性物質に該当する】
SADTが75℃以下
【SADT55℃以下の場合は輸送時に温度管理が必要】
自己反応性物質
【SADT50℃以下の場合は輸送時に温度管理が必要】
有機過酸化物

本試験は、自己反応性物質/有機過酸化物のフローから外れていますが、テストシリーズHとしてSADT(自己加速分解温度)を測定するための試験です。

クラス8(腐食性物質)

物質が腐食性物質であるか否かを評価します。

金属腐食性試験(4,000ml)

テストピースを試験物質に浸し、浸食度から腐食性を評価します。

評価 浸食度が6.25mm/yearを超える
金属腐食性物質に該当する(GHSカテゴリー1)
浸食度が6.25mm/year以下
金属腐食性物質には該当しない

クラス9(有害性物質)

UN No.2071「硝酸アンモニウム肥料B」に対して行う試験です。

トラフ試験(20kg)

試験物質を金網に入れて一方から強制加熱します。

評価 【自己分解発熱持続性有(+)】
分解の伝播が全体に広がる
【自己分解発熱持続性無(-)】
分解の伝播が全体に広がらない

クラス9(エアバッグインフレーター及びシートベルトプリテンショナー類)

IATA特別規定A115対応の外部火災試験(ボンファイアー試験)で、特にエアバッグ類に対して行う試験です。

外部火災試験

試験物質(エアバッグ類)の外部火災に対する影響を評価します。

評価 外装または圧力容器(シリンダー)が破裂飛散しない
火中に投じられた時、激しく燃焼しない
消火作業その他の緊急時対応作業を妨げる熱の放射がない

上記3点を確認できた場合、クラス9に該当します。

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